院長コラム

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漢方治療のワンポイントレッスン

漢方 Q&Aコーナー

【Question 1】漢方薬ってなんですか
最近食欲もなく何となく疲れやすい毎日を過ごしている39才の女性です。
近くのクリニックで検査をしてもらいましたが、異常なしと言われました。友人をおしゃべりしていたら同じような悩みで「漢方薬」を飲んでいるとの事。漢方薬ってどんなものでしょうか。
どこへ行ったら出してもらえるのでしょうか。
【Answer 1】
漢方薬は、自然の植物や鉱物などをいくつも組み合わせた薬です。数千年の年月をかけて患者さんの症状に合わせた組み合わせがいくつも生まれてきました。西洋薬と違って、通常の検査で異常のない場合でも悩んでいる症状があれば、漢方独特の、腹診、舌診、脈診などの診察法で、一人一人の体力、体質に合わせた薬を選ぶことできます。
このため西洋医学の検査で異常がでない女性特有の何となく疲れる、体が冷える、のぼせるなどの症状にも有効です。
漢方薬は、1976年より健康保険で医療機関でも処方ができるようになりました。西洋薬ではなかなか治らない病気に悩んでいるようでしたら「漢方専門医」などの資格をもつ漢方に詳しい医師に相談されてはいかがでしょうか。
【Question 2】冷え性で悩んでいます
38才女性です。以前より冷え性に悩まされています。2、3年前から、冷え症状がさらに強くなり、日中はもちろん、夜は靴下をはいてお布団に入ってもなかなか寝つけない状態です。今年の冬は沢山しもやけができました。最近、生理不順も気になってきました。この機会に体質改善をしたいと思いますが何かよい漢方薬はありませんか?
【Answer 2】
それはお困りですね。西洋医学的には冷え性治療のアプローチは難しいと考えられています。
しかし、漢方では「冷え」は大変得意な分野です。 冷えは「気血水」のさまざま異常によって起こります。今回ご相談の方は、元々、冷え体質と思われますが、最近月経異常が起こってきたとのことなので、血流障害、漢方で言う「血」の巡りが悪くなった「?血」の状態です。以前より日常の身体活動量が減って体力が弱ってきた可能性が考えられます。ウォーキング、ヨガや気功などの簡単な動作を日常生活に取り入れて、全身の血流を改善してはいかがでしょうか。 漢方治療では、体全体を温めて末梢の血流をよくするため、体を温める作用を持つ人参や乾姜などの配合された処方と血流を改善する作用を持つ当帰、芍薬、川? などの配合された処方を一緒に服用するとよい効果が得られる場合があります。生理不順に加えて、便秘、のぼせがあれば「桃核承気湯」、しもやけ、頭痛のある人は、「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」、めまい、むくみがある人は、「桂枝茯苓丸」などを用います。効果は人によって違いますが、早い方ですと1ヵ月ぐらいで、“足が冷えなくなった、顔色がよくなってきた”などと実感できることもありますよ。 一度お近くの漢方治療を行っている医師にご相談されてはいかがでしょうか。
 
 

【Question 3】月経前になんか変になるのですが
28才女性です。半年くらい前から、生理前に体調を崩すようになりました。症状は、気分がイライラしたり、落ち込んだり、夜中に目が覚める、お腹が張る、頭痛がするなどです。最近では、つまらないことで職場の上司とトラブルを起こしてしまいました。短期間ですが、毎月繰り返し起こるので、今後も続くかと思うと心配です。こんな症状の方って他にもいますか?また、何か良い治療法があれば教えて下さい。
【Answer 3】
ご相談の症状から、月経前症候群(PMS)と考えられます。PMSの症状はイライラ、憂鬱感、不眠などの精神的なものから、頭痛、腹痛、腰痛、便秘または下痢、むくみといった身体的なものまで多岐にわたり、多くの方が経験されているようです。一説には、排卵のある女性のうち、日常生活が困難なほど症状の重い方は10%未満ですが、何らかの症状を訴える方は半数以上とも、90%以上とも言われています。
PMSは様々な要因が絡み合って起こるため原因がはっきりと解明されておらず、確立された治療法はありませんが、西洋医学では精神症状が主体の場合は抗不安薬など、痛みに対しては鎮痛薬や抗炎症薬などを使用する対症療法が行われています。最近の研究では神経伝達物質のバランスを整える薬の効果が注目されています。
また、全身の状態を整えながら根本的に改善していく漢方治療も適しています。PMSには加味逍遙散、当帰芍薬散、桃核承気湯などがよく用いられ、症状に応じて、サフラン、天麻末などが加えられます。漢方治療では症状が出てから服薬するのではなくて、毎日服薬することが大切です。まずは、2~3ヵ月程度の継続した服薬をお勧めします。
日常生活では、生理が始まる5日ほど前から冷たい飲み物や食べ物を控えてお腹を冷やさないように心がけましょう。へそから指の幅3本分下で中心から左右指幅3本分離れた「大巨」のツボや足の内くるぶしの頂上から、指の幅4本分上方骨と筋肉の境目の「三陰交」というツボがおすすめです。
【Question 4】インフルエンザに効く漢方薬
9才と12才の子どもをもつ母親です。インフルエンザ治療薬のタミフルを飲んだ子どもがベランダから飛び降り死亡したなど異常行動があると聞きました。もし、自分の子どもがインフルエンザにかかったらどうしようか不安です。薬局の人にインフルエンザに効く漢方薬があると聞いたのですが本当でしょうか。
【Answer 4】
インフルエンザ治療薬タミフルを服用した子どもが興奮状態になり、異常な行動を起こしたため、現在タミフルは10才台の人には原則使用が禁止されています。インフルエンザに対する漢方薬は、適切に使用すれば西洋薬と比べても遜色のない効果が報告されています。
発熱して、2日以内、額から汗の出ていない状態なら「麻黄湯」がファーストチョイスです。体力のない高齢者なら「麻黄附子細辛湯」も使われます。ただし、発熱して2日以上経っていたり額が汗ばんでいる状態なら「麻黄湯」は却って治りにくくなる可能性もあります。この場合は、「小柴胡湯」や「柴胡桂枝湯」などを用います。さらに治りかけているが、なんとなくすっきりせず咳などで夜眠れない時には「竹ジョ温胆湯」が使われます。このように漢方薬は、病気にかかった時期を重要視し、この時期を守ればとても安全で効果的です。
また、漢方薬を服用しているとインフルエンザなどの予防になると以前から言われていましたが、最近、「補中益気湯」と「小柴胡湯」によってNK細胞の活性上昇し、免疫反応を高めてインフルエンザ予防効果が明らかにされました。
漢方薬は自分の本来持っている免疫力を高めて、病気を改善する薬です。今シーズンのインフルエンザには、漢方薬を試みてはいかがでしょうか。
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