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東愛知新聞健康コラム

8/18掲載 日々是漢方5

日々是漢方5 (H14/08/18)

 ●漢方は排泄の医学
二千年前も昔に書かれた漢方の有名な医学書「傷寒論」には、熱、咳、痰などの症状はもちろん、汗、尿、便などの生理的現象(排泄物)についても極めて詳細な記載があり、これらの状態が直接病気の治療法につながっていると考える点が西洋医学と大きく異なります。
例えば、風邪の初期には葛根湯はよく効きますが、ただし、既に汗の出ている状態であればこの薬はあまり効果がありません。この原則を無視して、風邪には何でも葛根湯を出す医者を、昔、葛根湯医者(ヤブ医者)と呼んでいました。また、やせ型の女性で夏に弱いタイプの人は往々にして、水分を多く飲む割に汗をあまりかかず、尿の出が悪い人が多く、このような人に五苓散(ごえいさん)を飲んでもらうと、汗や尿がよく出るようになり、体がすっきりして元気になります。
便通についても、子供が高熱を出すと浣腸したら熱が下がることは、原因ははっきりしないけれども以前から言われています。
また、ボケのひどい人をよく観察していると、便秘がちになるとボケがひどくなり、排便がスムーズにいくと症状が軽くなることがしばしばあります。このような人に、西洋薬の刺激性の強い下剤ではなく、若干効果がゆっくりではありますが、排毒作用、浄化作用をもつ漢方薬を飲んでもらったところ以前よりボケ症状を改善することができました。
その他、便秘に悩んでいると外来にやってくる女性は、よく話しを聞いてみると、頭がのぼせたり、イライラするなどの悩みもあわせて持っている人が多い傾向にあります。ある人は生理の前に、決まって夫婦喧嘩をしてしまうと悩んでいました。この方には、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)を飲んでもらったところ、イライラがとれて楽になったと喜ばれました。でも一番喜んでくれたのは多分ご主人だと思いますが。
このように、西洋医学ではあまり関心を示さない、汗、尿、便などの排泄物のわずかな変化も漢方では、体の変化を表す重要な要素として考え、治療に結び付けるのです。皆さんも健康のバロメーターとして自分の排泄物の変化に少し関心を持ってはいかがでしょうか。

西田メディカルクリニック 西田 元彦

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