東愛知新聞健康コラム
癒しの養生学6 (H16/10/04)
●からだ全体を診る
西洋医学の発達により、人類の寿命は飛躍的に延長し、さまざまな病気を克服できるようになりました。西洋医学は人間の体を、胃、肝臓、心臓、筋肉などに細かく分類して、個々に分析、治療していきます。しかし、東洋医学では、心と体全体のバランスの変調をみつけだし、そのバランスを整えることで治療します。このため、西洋医学はパーツの医学、東洋医学は全体の医学といわれています。どちらも病気を克服するためには大切な医学なのです。
西洋医学は、細菌感染、結核、外傷などの病気や急性心筋梗塞、脳梗塞などの病気には素晴らしい成果をあげています。しかし、西洋医学主体の現代の医療体制では、アトピー性皮膚炎、喘息などのアレルギー疾患、うつ病などストレス疾患の増加など、西洋医学の限界もしだいに明らかになってきました。
その流れの中で欧米などでは、西洋医学の治療は基本としながらも、東洋医学、あるいは民間療法などの得意分野も包括的に取り入れていこうとする「統合医療」を行なう医療施設が、増えてきました。さらに、この統合医療の治療医学に加え、予防医学、終末期医療をも重視し、ただ単に病気を診るのではなく、人間まるごとを診る「全人的医療」(ホリステック医学)の考え方も広まってきています。
私もこのホリステックの考え方に賛同し、微力ながらその普及に努めておりますが、この考えが本格的に普及するためには、皆さんに病気を防ぎ、病気を治す主役は、自分自身であるという自覚を持ってもらう必要があると考えます。同じ病気の人でも、薬の効く人、効かない人、または重い副作用の出る人などさまざまです。民間療法でも、同じ事をやっても、どんどん健康になっていく人、逆に体調が悪くなっていく人がいます。医者、および施療者はあくまでもアドバイザーにすぎないのです。今行なっている療法が、本当に自分に合っているかどうか、常に自分自身に問いかけるしかないのです。現代人は、あまりに検査データなどの数字に振り回され、自分自身の体の声に耳を傾けなくなったように思います。
「死イコール敗北」という西洋医学的発想では、本当に幸せな人生は送れないのはないでしょうか。限りある命を授かった人間として、健やかな日々を送り、そして十分に生きたという満足感を得て、穏やかな死を迎える。それが人間として納得のいく人生ではないでしょうか。そのためには自分の体と常に会話しながら自分にあった養生を重ねていくことが大切と考えます。
西田メディカルクリニック 西田 元彦